WAKE UP!(8)
栄泉は地下にある懲罰房へ入れられた。何度確認しても、悟浄の術を解く方法は無いの一点張りだ。 『三蔵様をたぶらかした制裁を加えた』と言う栄泉に、三蔵は、己を責めた。 ――俺が悟浄をこんな目にあわせちまった―― 両手を強く握り締める。だが、このまま終わらせるつもりはない。
「夢に入る?悟浄の夢にですか?」 三蔵から出された提案は、悟浄の意識の中に入り込み、内側から目を覚まさせる、というものだった。 「今まで、やったことはないがな。うまく悟浄の意識と同調できれば、可能なはずだ」 「1日たっても、俺たちが目を覚まさなかったら‥‥頼めるか」 愛用の小銃を差し出されても、八戒は動くことが出来なかった。 八戒の葛藤を余所に、横から腕が伸ばされた。 「預かっとくよ。けど、これで三蔵と悟浄を撃つためじゃあない。帰って来るんだろ?二人とも。それとも、悟浄を連れて帰って来る自信が無いの?普段態度でかいクセに案外情けねーのな、三蔵」 「悟空‥‥」 三蔵の左手が悟空の頭に乗せられる。‥‥‥左手? スパーン! しっかりと三蔵の右手に握られたハリセンが、悟空の頭を直撃した。もちろん左手は引っ込められている。 「ずりーぞ!フェイントじゃんか!」 頭をさすりながらぶつぶつと文句を言う悟空の姿に、適いませんねぇ、と八戒は心の中で呟いた。先程までの悲壮な空気が、嘘のように無くなっている。 「始める‥‥静かにしてろよ。外界からの刺激がどう影響するか分からんからな」 まるで煙草でも買いに行くかのような声に見送られ、それは始まった。
三蔵は悟浄の枕元に置かれている椅子に腰掛け、2、3度悟浄の髪を梳いてから、そのまま悟浄の額に片手を乗せた。目を閉じ、真言を唱えながら意識を集中していく。 八戒と悟浄は黙って見守っていた。ふと、八戒が隣を見やると、悟空の肩がわずかに震えているのが分かった。拳を握り締め、視線だけは真っ直ぐ三蔵を見据えている。 (大丈夫ですよ、あの二人なら) それが通じたのだろう、悟空は八戒の手を強く握り返して、笑った。
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三蔵様、頑張れ!