WAKE UP!(10)
『‥‥愛している』
その時、腕の中の悟浄が、ピク、と動いたかと思うと、一瞬にしてまわりを取り囲んでいた三蔵の幻影たちが掻き消えた。 「‥‥悟浄?」 悟浄は、返事の代わりに頭を三蔵の胸に押しつけた。 「良かった‥‥本物の三蔵だ‥‥‥。なんか、違う声がしたから‥‥」 いい加減、鬱陶しいから聞かないようにしていたのだと、少しぎこちなく笑う悟浄を、三蔵は黙って抱きしめた。 「‥‥話は後だ。ここから出るぞ」 ここは悟浄の意識の中だが、栄泉の術がかかっている。例え悟浄が自分を取り戻しても、放っておいて自然に目覚めるという類のものではない。 「――了解。やるしかないワケね」 悟浄は目を閉じた。三蔵の気配が、自分を包み込む。三蔵の唱える真言が、耳に心地よい。それに意識を集中しながら、悟浄は温かな光が周りを満たしていくのを感じていた。
部屋で待つ八戒と悟空には、時間が随分長く感じられていた。 渡された小銃を使うつもりなど毛頭ないが、もし、このまま二人が目覚めなかったら――。あの二人の性格からして、眠ったまま生かされる状態を望むとは思えない。
長いのか短いのか、二人の時間の感覚がすっかり麻痺してしまった頃。 「う‥‥」 小さな声をあげて、三蔵がゆっくりと体を起こした。 「三蔵!戻れたんですね!」 八戒と悟空が駆け寄ってくる。三蔵は、その答えを口にする必要は無かった。
「良かったー悟浄!俺、すっげー心配したんだかんな!」 口々に声をかける二人に、悟浄はうっすらと微笑む。どうやら、ちゃんと聞こえているらしい。 悟浄を見つめたまま固まっている三蔵に、悟浄が片目を瞑った。 「さんきゅ‥な、三蔵。迎えに来てくれて」 黙っているわけにもいかず、三蔵は意を決して、話し掛ける。 「悟浄‥‥ちゃんと聞こえてるのか?俺の‥‥」 オウム返しに答えるその姿に安心したのか、八戒と悟空は目配せしあい、部屋を出ていった。 それでもまだ心配が抜けきれないのか、三蔵が問い掛ける。 「さっき、俺が言った事も‥‥聞こえてたのか?」 そんな三蔵の様子に苦笑しながら、悟浄は三蔵に向かって両手を伸ばしてきた。覆い被さるようにして抱きしめる。随分久しぶりに、こうしているような気がしていた。 悟浄は三蔵の首に廻した腕に力を込めて、耳元で囁いた。
「俺も、愛してる」
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割とあっさり悟浄さん復活!それは三蔵様のお力だから!……という事で、お許しを。
「愛している」という科白は、三蔵様は絶対言わないなーと思ったのですが、他に悟浄さんの
魂を直接揺り動かしてサルベージする言葉が思い浮かびませんでした。
んで、お返しに悟浄さんにも言っていただいたのですが……。
とにかく、お帰りなさい、悟浄さん。次回、最終話です。