STAND UP!(3)
「何で、赤ん坊を殺す必要があるんだよ!?酷いじゃん!」 あの地下の封印の仕組みと、その目的について説明された八戒と悟空だったが、その余りの残酷さに悟空が三蔵に食って掛かった。 「そ‥んな‥‥」 「一体‥‥」 「あそこで殺されたのは‥‥‥恐らくは、禁忌の子供だ。護符の状態から見て、禁忌の子供が生まれる度に、同じことを繰り返しているんだろう」 重い沈黙が、落ちた。
「悟浄は、それを知ってるんでしょうか‥‥?」 「‥‥気付いてる、だろうな」 『俺は大丈夫だから』そう言った悟浄の言葉を思い出す。あれは、体のことを言ったのではない、と感じていた。 「何で、なにも言わなかったんだろ‥‥悟浄」 三蔵が何を言いたいのか、八戒にはわかった。恐らく、悟浄は三蔵の過去を気遣っている。殺された赤子を川に流された自分と重ね、傷付かないかと心配したのだ。それが自分と同じ禁忌の子供なら、なおさら三蔵を悲しませることになる。自分の痛みはさて置いても、他人の傷を気にする人なのだ。それが自分の大切な人ならば、尚更だろう。
一方、物思いにふける八戒の隣で、三蔵はギリギリと唇を噛み締めていた。
「俺、悟浄と遊んでくる」 「!?」 「どーせ、眠ってなんかないって分かってるクセに。そうやって八戒は、悟浄に気を遣っちゃうし、三蔵じゃ、悟浄が気を遣っちゃうじゃんか。だから俺が遊ぶの。一人で考え込んでさあ、解決するような問題だったら放っとくけど、今度のは違うだろ?ぜってー考えたって仕方ないって!体動かしたら、少しは楽しくなるかもしれないじゃん?俺、悟浄には笑ってて欲しいもん!」 言うなり、悟浄の寝ている場所へと駆けて行く。そして思い切りジャンプしたかと思うと、悟浄の上に圧し掛かった。 『ぐえッ!!ってナニすんだこのチビ猿!痛ぇじゃねーか!どけ!重い!』『やーだね』『てめぇぇぇぇぇ!!』
「一本、取られましたね。三蔵」 「妙なこと言ったら‥‥殺すぞ」 「僕的には全然妙なことじゃないんですけど‥‥三蔵」
一際大きい悟浄の笑い声が、辺りに響く。 今、失われた小さな命たちが安らかな眠りについていることを、三蔵は信じた。
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悟浄さん不幸体質話でしたが、いかがだったでしょうか?
しまった!三蔵様と悟浄さんが絡んでない!三浄サイトなのに!
……というわけで、次回はフォローSS。もう少し、続きます。