LAST LOVE(後編)
翌朝、宿の親子に見送られ、三蔵たちは西へと旅立った。 「や〜い、振られてやんの」 悟空のからかいに相応の返事を返しながらも、何故か悟浄は満足気な様子だった。
『せめて明日、この子が目を覚ます時には、あんたらが側に居てやれ』 それは出発前に宿の夫婦から聞いた、夕べの三蔵の科白。 「この家業ですので、私たちはいつも朝早くから起き出して‥‥。いつもこの子は、目が覚めたとき、一人ぼっちだったんです。聞き分けがいいのに甘えて、我慢ばかりさせてしまいました。これからは、出来る限り一緒にいてやろうと思います」 そう言って、主人は絽香を抱きしめた。 幼い少女を、三蔵は救ったのだ。
悟浄は、黙ったままの助手席の男に思いを馳せる。 今では、それだけではない、という事は分かっているから。
『俺も、お前が最初で最後だ』
言葉なんて、何の意味も無いけれど。 こいつの言葉なら真実かもしれないと思えるのは、俺の願望か? ―――だとしたら。
「‥‥イイ夢だったよな」 心の中で呟いたはずのそれは、うっかり口から漏れていたらしい。
「八戒、ジープ止めろ」 急停車したジープの上では、何事かと三人の視線が三蔵に集まる。すると三蔵は、何を思ったのかジープを降りると、悟浄の腕を掴み、後部座席から引き摺り下ろした。 「な、ナンだよっ?」 「りょーかい」 離せ戻せと喚きながら、ズルズルと三蔵に引き摺られていく悟浄の姿を、八戒と悟空はにこやかに手を振りながら見送った。 「バッカでやんの、悟浄」 昨日の今日だ。大体何があったのか、想像はつく。 「賭けますか?このまま出発が遅れてさっきの街に戻る羽目になる、に千円」 遠くで、微かに銃声が響いたのが聞こえた。 「なるべくあそこからは離れた宿にしよーな。んで、飯の美味いトコv」 さわさわと、心地よい風が周りの木々を揺らす。 今頃、三蔵の説教を体に受けている悟浄に僅かばかり同情しながらも、八戒と悟空はのんびりと時を過ごした。
「LAST LOVE」完 |
み、短ッ!
何か、無理に終わらせたような気がします?それは、貴女の気のせいです!
ええ、気のせいですともっ!