―ずっと夢見て・・・
旅が終わった。
思ってみればけっこう短かったりして。そう思うのは・・・きっと楽しかったからで。
でも、そしてまた。
―失うのかと・・・
あとは指定された場所に帰るだけ。ただ・・・それだけ。
「宿に泊まるのは今日で最後です。明日中には着けますから」
八戒の言葉を聞いてそれぞれ自分の部屋へと戻る。
他の二人と同じように部屋に戻ろうとしていた三蔵を八戒が呼び止める。
「三蔵、ちょっといいですか・・・?」
「ああ・・・なんだ?」
少し・・・。泣き出しそうな顔で八戒が言う。でもそれすらも笑顔で隠して。
「どうするつもりなんです?これから・・・」
「・・・!」
いつも感じてきた不安。
この旅が終わったら?
「あなたに・・・全てはかかってるんですよ?彼の・・・」
「ああ・・・分かってる」
分かってる。
イヤって位に現実と、この欲望なんざ。
きっと。
こんな俺を抱いてくれたのは、こんな旅の途中で、女が居なかったからで。
目を閉じて。耳を塞いで。
ただ逃げてきた一番欲しいものからくるものでは・・・なくて。
「愛してるなんて、馬鹿げてるよな」
小さくつぶやいた言葉は、思ったより心に染みた。
「貴方はどうしたいんですか?三蔵」
緑の眼が真っ直ぐ自分を捉えていて。嘘なんざつけねぇと。つかせねぇ・・・と。
「俺は・・・アイツを手離す気はない」
同じように眼を見ていうと、ニッコリといつものように笑って言う。
「そうですか、安心しました。
あの人・・・人に触ることに無防備そうに見えて本当はひどく警戒してるんです。
過去のことがありますから、無意識に自分が傷付かない様に
人との深い関係を避けてるんです。
誰にでも優しいのは特定の人物が居ないからです」
そこで一呼吸おいて三蔵を視界にとらえる。
「でも、そんなあの人が三蔵には手を伸ばしたんです。
自分が満たされてはじめて・・・誰にでも優しくできる・・・あの人になったんです。
今の悟浄にとって貴方は全てですから。
貴方なりに悩んでいたことも、誤解してるんじゃないですか?」
「・・・お見通しってことか」
「ええ、まあ」
そう言ってより一層ニッコリ笑うとドアを指差す。
「ハイ、じゃあさっさと行っちゃってください」
「今か・・・?!」
「今以外にいつがあるって言うんです?」
二―――――ッコリvv
今までの経験から判断した三蔵の答えは・・・・
「・・・行ってくる」
―あなたなりに悩んでいたことも―
そんなことは。分かっているんだ・・・。
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