WAKE UP!
WAKE UP!(1)
「この村では、泊まりませんよ。悟空と僕とで買出しだけしてきますから、三蔵と悟浄はここで待っていて下さい。いいですね?」 ――ここら辺りで一番険しい山を抜けてから二日。ようやく人里にたどり着いた。小さな寺院を中心にいくつかの集落の点在する、信仰の厚そうな山間の村。 理由は分かり切っている。数日前に山中で見付けた無残な処刑の跡。禁忌の子供を殺す風習が、この付近にはあるのだ。悟浄をこの村には近づけたくないと三人は思っていた。 「あー、だったらさ、お前らだけでも宿に泊まれば?俺、ここにいるからさ」 言った側から三人に睨まれて、悟浄は肩をすくめた。 「あのさあ、気ィ遣ってくれてんのは分かるんですけどね‥‥止めてくんない?寒いから」 返って来るのは三人三様の答。なんとなく、くすぐったい気持ちになる――けれど。 (参ったね、こりゃ) 無駄とは思いつつ、もう一度皆を説得しようと悟浄が口を開きかけた、その時。 「この話はひとまずお預けにしましょう‥‥どうやら、お客さんのようですよ」
「玄奘三蔵法師様でいらっしゃいますね?」 馬から下りた僧侶は、まだ年若くはあったが、長年の修行を思わせる風格が漂っていた。 三蔵はいい加減うんざりしていた。こんな村になんざ、本当は買出しにでさえ寄りたくは無いのだ。 「‥‥それに、ここからの山越えは一本道ですが、途中に川がございまして‥‥橋が架かっていたのですが、先だっての大雨で流されてしまいました。現在村の者が急いで復旧作業をしておりますが、最低三日はかかります」 何だと‥‥?三蔵は頭を抱えたくなった。 「寺に行くしかないみたいね、三蔵様」 その様子を、栄泉はにこにこと眺めていた。
寺に入ると、総代たち寺の重鎮がこぞって出迎えていた。歓迎の式典などを用意していたらしいが、三蔵がそんなものに同意するわけもない。一行はとり合えず寺の一室に通された。 「寝室はこの奥にございますので。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいますよう」 悟浄が部屋の奥へと消えていったのを確認して、八戒が口を開いた。 「あの札、かなり古かったんだろ?じゃあ、もう今はあんなことやってねーんじゃん?」 「‥‥だと、いいがな‥‥」
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プロローグ編です。
ここに何とコメントしていたのか既に、不明です。(恥)