Happy Medicine 1.93(3)
思いがけない告白に悟浄は固まった。 まさか三蔵が自分からそんな薬を口にするなどとは予想外で、悟浄の頭は真っ白だ。
―――――最近、彼氏とのHで満足できない女性が急増しています。 注1:一度目の射精までに要する時間は、概ね普段の2倍から3倍に延長されます。(当社実験によるデータ) さあ、今夜のあなたは一味違う!たっぷりと時間を掛けて、最愛のパートナーを思う存分可愛がってあげましょう―――――
読み終えた悟浄の手から、はらりと紙が滑り落ちた。
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精力増強剤は確実に効いたらしく、悟浄の息は完全に上がっていた。目は潤み、頬は上気し――――。今までなら確実に、とっくの昔に三蔵に押し倒されている状況だったが、驚くべき事に三蔵は涼しい顔で悟浄の様子を見ているだけだ。 「オマエ‥‥‥元々、そんな早くねぇじゃん‥‥‥」 馬鹿かお前は。そう続けられて悟浄の頭にますます血が上る。 「‥‥‥ざけんな、なら何で!」 ―――お前の乱れる姿を、じっくりと拝ませて貰う――― 「あ‥‥」 自分の血の気の引く音というものを初めて聞いた気がした。 「そういう事だ。初めて気が合ったな」 三蔵は決して『早い』という訳ではない。それなのに。 ―――今夜自分は、一体どんな目にあわされるのだろう。おまけに、その姿を全て三蔵に観察されてしまう―――。 ぞくり。 その想像は悟浄の背中に冷たい汗と――――同時に、体の奥底にある種の疼きをもたらした。下腹部に熱が集中する。 (ヤバ――) 「限界か?」 無意識に頷きかけた悟浄だったが、意地と根性で踏みとどまった。決壊寸前の理性とプライドが、悟浄の中で戦っている。そんな悟浄の様子を楽しげに眺めていた三蔵が、たったひと言、名を呼んだ。囁くように小さく、低く。 悟浄、と。 それだけで、悟浄の理性はあっさりと陥落した。 「焦んな。朝まで時間はタップリある」 三蔵は悟浄の腰に軽く手を添えてはいるが、そこには情欲の欠片も感じられない。堪らなくなった悟浄はいやいやをするように、額を三蔵の首筋に擦り付けた。 「仕方ねぇな。―――なら、せいぜい頑張って」 薄紅色に染まった耳へと流し込むように三蔵が囁くと、悟浄の体がピクリと揺れる。 「俺をソノ気にさせてみろ」 三蔵の言葉が終わるより早く、悟浄はその場に跪いた。カチャカチャという三蔵のベルトを外す音が静まり返った部屋に木霊する。だがその音は、すぐに淫猥な水音にとって代わった。いつもより遥かに反応の鈍いものに、悟浄は必死に舌を這わせる。 強請る素振りも隠さず自分を感じさせようと躍起になっている男の紅い髪を、三蔵はまるで壊れ物に触れるかのように、優しく撫でた。 「――――楽しい夜になりそうじゃねぇか?」 その口元に、勝者の笑みを浮かべながら。
「Happy Medicine 1.93」完 |