横顔

By ユキ様

久しぶりに着いた街は何か祝い事の真っ最中で、人が溢れかえっていた。
そんな人混みを、宿の一室から悟浄がボーッと眺めている。
今日の部屋割りも三蔵と悟浄、八戒と悟空になった。
 

 

ふと、視線を外から部屋の中に移すと、椅子に座り新聞を広げている三蔵の姿が目に止まった。
            

(綺麗…だよなぁ)
悟浄は心の中で呟く。
まるで月のような黄金の髪、まっすぐに自分の道を見つめる紫電の瞳、容姿だけでなく声も体に響く心地よいモノで、仕草一つ一つが神秘的な三蔵…。
(睫毛長いし、肌は白くて綺麗だし…モテるはずだよなぁ)
街を歩いていると、ほとんどの人が三蔵を振りかえる。
三蔵法師だから、というのもあるが彼の姿形に興味があるのだろう。
            

男とは思えない細くて長い指。
あの手で、あの体で毎晩泣くほどの快楽を与えられていると思うと、自分でも顔が赤くなるのがわかる。
 

            

じーっと見つめていると、その視線に気付いたのか紫電の瞳が悟浄を捕らえた。
慌てて目を逸らすがすでに遅く、後ろから抱きしめられる。
「どうした?」
三蔵はずっと自分を見ていた理由を聞いた。
「べ、べ、べつに!///」
(綺麗だから見惚れてた、なんて言えない!!///)
何かあるのはこの真っ赤な顔と吃ってる声でわかる。
「悟浄…」
抱きしめる腕の力を少し強め、耳に唇を押し当て名前を呼ぶ。
悟浄がコレに弱いのを知っているので、わざと低い声をだす。
「…っ!…綺麗だなぁ…と思って…///」
「何がだ?」
益々顔を赤くした悟浄を見て、何が綺麗なのか疑問に思った。
悟浄は三蔵の意味不明な質問に首を傾げた。
「何がって…三蔵が」
それを聞いた三蔵は小さい溜息をつく。
「てめぇ…自分の姿、鏡で見たことねぇだろ?」
そう言って部屋の隅に置かれている鏡を指差す。
「え?」
鏡を見ると、見飽きた自分の顔が映る。
(別に…変な顔はしてないと思うんだけど…)
「お前の方が綺麗だ」
深紅の髪を一房手に取り口付ける。
「な、な///」
三蔵は上手くしゃべれてない悟浄をベッドに押し倒し、覆い被さる。
          

「お前は自分の魅力に気付いてねぇんだよ」
きっと悟浄の事だから、街の人が振り返るのは三蔵が目を引いてると思ってるに違いない。
しかし実際は振り返ってるのはほとんどが男で、その視線は全て悟浄に向けられている。
三蔵と関係を持つようになってから、悟浄は色香が増した。
興味がない男でも目を奪われるような顔や仕草をする。
「三蔵…っ」
頬や首筋に降ってくる口付けに体の奥が痺れてくる。
「好きだよ…三蔵」
少し潤んだ瞳で見上げると三蔵は優しく微笑んだ。
 

 

 

「あぁん!やぁ…んぅ…っ…ぁん…」
ベッドの軋む音と悟浄の喘ぎ声が響く。
何回イったかもわからない程、悟浄も三蔵も乱れた。
「悟浄…っ」
三蔵の背中に爪を立て、必死にしがみ付き悟浄は快楽の涙を流す。
「ん…っあぁ…ひゃぁ…さんぞ…ぉ…イっちゃ…んぁ…っああぁぁぁぁぁ!!」
            

            

      

痛む腰を庇いながらゆっくり体を起こす。
「いたた…三蔵ってば手加減しろよなぁ…///」
隣りで眠る三蔵に愚痴る。
「寝顔も綺麗…」
悟浄は横になり近くで三蔵の顔を眺めた。
(あ…俺この顔が一番好きかも///)
寝ている三蔵の横顔をこんな近くから見れるのは悟浄だけだ。
「俺だけの特権v」
ピタッ、と三蔵に体をくっ付け幸せそうに笑う。
「誘ってんのか?」
「ふぇ!?」
変な声を発した悟浄は恐る恐る三蔵の顔を見ると、背中を厭な汗が流れる。
 

悟浄の視線の先には意地悪く輝く紫電の瞳があった。                 
  

 

                                              終わり