「三蔵〜もう起きないと8時になるよ〜?」
いつもなら起きてリビングで新聞を読んでいる三蔵が、今日はまだ姿を見せない。
悟浄は朝食を作り終え、三蔵のいる寝室のドアを開けまだベッドの中にいるのを確認した。
「三蔵?どうかしたの?」
軽く体を揺すり名前を呼ぶと小さく返事をした。
「いや…何でもない…」
様子がおかしいと思った悟浄は三蔵の額に手を当てる。
するといつもの体温とは明らかに違く手のひらが熱くなる。
「熱あるじゃん!大丈夫?」
起き上がろうとする三蔵の体をベッドに押し戻し、布団を掛けた。
ベッドの横にある机の引き出しから体温計を取り出し三蔵に渡す。
暫くして体温計から小さな音が聞こえた。
「えっと…うわっ、38.7℃もある…とりあえずお粥作ってくるからそれ食べて薬飲んで寝ること!」
悟浄はそう言うとキッチンへ足を運んだ。
慌ただしく出ていく背中を見つめ三蔵は溜息を吐く。
「ちっ…情けねぇ」
苛付きを抑える為、煙草を吸おうと思ったが悟浄に心配をかけるので止めた。
大人しく横になっていると悟浄がお粥を持って戻ってきた。
「食べれる?少しだけでもいいから無理して食べて?」
心配そうに顔を覗き込んでくる悟浄がお粥の入った茶碗を自分の手元に置く。
レンゲで少し掬うと、フーフーと冷まして三蔵の口許に差し出した。
「…自分でやる」
「駄目!一度やってみたかったんだもんv」
どこか楽しそうに看病する悟浄が可愛くて三蔵は違う意味で熱が上がりそうだった。
その後悟浄の愛溢れる看病が続いた御陰か、三蔵の風邪は治った。
しかし翌朝、今度は三蔵が悟浄の看病をする事になったらしい…。
「〜独角の憂鬱編〜」に続く |