悟浄ちゃんは奥様v〜夏祭編〜

By ユキ様

今日は街で年に一回の大イベント、夏祭の日だ。
前から回覧版や広告でそのことを知っていた悟浄はずっと楽しみにしていた。
そんな悟浄の元に数日前八戒からある荷物が届いた。
中を見ると浴衣が2着入っている。淡い紺色の浴衣と見るからに女性物の浴衣。
そして手紙らしき紙が一枚。
 

 

『もうすぐお祭りがあるので浴衣を送りますv二人に似合う生地を買って作ったんですよv大事にして下さいねv』
 

 

 

 

「やっぱさぁ…女物の浴衣変じゃない…?」
貰った時はあまり深く考えずに喜んだ悟浄だったが、当日実際に着てみると
ものすごい違和感に襲われる。
「似合ってんじゃねぇか」
先に着替え終えた三蔵はマルボロを吸いながら悟浄の体を上から下へと眺めた。
 

薄い紫の生地に一輪の紅い華が描かれている浴衣は本当に悟浄に似合っていた。
『紫に紅』、八戒なりの気遣いだろうと三蔵は小さく笑う。
「変じゃない?」
何度も鏡と三蔵の顔を見ながら不安な眼差しで聞いてくる。
三蔵はもう一度似合ってると告げると、深紅の髪に口付けた。
「これなら髪、結ったほうがいいだろ…」
そう言いながらテキパキと悟浄の髪を自分好みに結いあげていく。
悟浄関係だと恐ろしい程器用になる三蔵は悟浄も納得する髪型に仕上げた。
「サンキュv三蔵v」
その笑顔に思わず押し倒しそうになったが、少ない理性でどうにか抑える。
 

普段和服を身に付けない悟浄の浴衣姿は新鮮で、色香も増していた。
いつまで我慢できるかを考えながら、三蔵は悟浄を連れて祭りに出かけた。
 

 

 

 

 

「射的やろぉv」
三蔵より少し前を歩いてる悟浄は右手に持っている林檎飴を食べながら振り返り、射的の出店を指差す。
「三蔵なら百発百中でしょv」
「…どれが欲しいんだ?」
店の男に金を払い6発のコルクでできた弾を受け取る。
的となる景品は人形やお菓子などで綺麗に棚に並べられていた。
「う〜ん…あ!あれがいい!」
「あの猫か?」
悟浄の指差す先には色々な形の猫の置物が並んでいる。
「形はどれでもいいんだろ?」
そう言いながら置物に一発弾を当てると後ろに付いてるネットの上に落ちた。
「さっすがぁ〜v次あれ!」
 

 

次々に悟浄が欲しがった景品を落とし、弾は残り1発になった。
最後の1発は三蔵が好きなの当てていいよ、と悟浄に言われたがどう考えたって欲しいものなんてあるわけがない。煙草もあるが自分が吸うのとは違う種なのでいらない。
端から端まで景品を見渡すと、ある景品が目に入った。
三蔵はそれに狙いを定め引き金を引いた。
 

 

 

「ねぇ、何当てたの?」
取った景品に夢中になっている間に、三蔵は何かを当て店の男から紙を受け取っていた。
三蔵の手から紙を取り上げて見る。
「…地図?」
よく見ると目的地の×印までもう少しで着く。
石段を登ると小さなベンチが一つある広場らしき場所に出た。
そこからは祭りの出店を見下ろす事ができ、打ちあがる花火も木に邪魔されずに見える。
「すげぇ〜…穴場?」
「らしいな、『恋人と愛を深める場所』と書いてあった」
ベンチに腰掛け悟浄の腰を抱くように引き寄せる。
「確かに二人きりになれるね」
小さく笑いながら三蔵の唇に自分のそれを重ねる。
「深めてみるか…?」
三蔵が意地悪く笑うと悟浄は頬を赤らめた。
「…バーカ///」
これ以上深まりようがないって、と囁き三蔵に抱き付いた。
「そうだな…」
優しく抱き締めると、ちょうど空に恋人と同じ色の花火が打ちあがった。
 

 

                                          「〜看病編〜」に続く