昨夜の行為で痛む腰を擦りながら、悟浄はベッドの中で唸っていた。
隣りでマルボロを吸っている三蔵を上目遣いに睨むと額に口付けられた。
「ちょっとは手加減しろよな///」
「誘ったのはお前だ」
小さく笑いながら深紅の髪に指を滑らす。
「あ、今日って寺行く日じゃん…三蔵、一人で行ってきて?」
全然寺へ足を運ばなくなった三蔵だが、悟浄付きであれば渋々と仕事に出かけた。
今日も悟浄付きで行くはずだったのだが、悟浄が動けないので付き合えない。
「…別に今日行かなくてもいいだろ…」
三蔵のその言葉に悟浄がキレた…。
「駄目!!三蔵、俺と暮らす時『一日おきに寺へ行く』って言ったのに行かないし!
行くって時は必ず俺を連れてくし!!真面目に仕事しなくなった!!!!
もし三蔵が寺に行かないなら…俺実家に帰るからな!!!!」
本気で言っている悟浄に危機を感じた三蔵は思わず髪を弄んでいた指を止める。
暫くして怒っていた悟浄の顔が泣きそうになっていった。
「…三蔵が周りから『仕事しなくなった』って文句言われたりしたら嫌だ…」
「悟浄…わかった、ちゃんと寺に行くようにする」
抱き寄せて深紅の髪を優しく撫でると、悟浄は三蔵の背中に腕を回した。
「お前の言う通り、最近怠けすぎた…」
「ごめん…言い過ぎちゃった…」
「気にするな」
優しい三蔵の声に安心して悟浄は笑顔を向ける。
軽く朝食をとった三蔵は久しぶりに法衣を纏った。
さすがに寺へジーパン、Tシャツで行くわけにはいかない。
「夜ご飯作って待ってるからねv」
玄関まで見送りにきた悟浄が、どこか嬉しそうに言う。
「ああ…どうした???」
「なんか…新婚さんぽいなぁ〜って///」
俯いて顔を隠しても髪から覗く耳が真っ赤である。
「新婚だろ?」
「そ、そうだけど…///」
「いってくる」
喉の奥で小さく笑いながら三蔵はドアノブに手を掛けた。
が、悟浄に呼ばれ振り返ると頬に何かが触れた。
「い、いってらっしゃい///」
三蔵の思考が止まる。
今のは俗にいう、『いってらっしゃいのキス』だ。
男なら誰もが憧れる朝の営み。
「…い、いってくる…」
頭の中が真っ白なまま三蔵は寺に向かった。
溜まっていた仕事を終え、帰宅中の三蔵は今朝のことを思い出していた。
自分が仕事に行けば毎朝あの悟浄の可愛い行動が見れる。
三蔵は毎日寺に行こうかと考えていた。
家に着いて玄関を開けるといい匂いが三蔵の鼻を擽る。
夕飯はシチューのようだ。
「おかえりv三蔵v」
エプロン姿の悟浄がキッチンから出てきた。
思わず頬が緩む。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも…俺にする?」
そう言って体を寄せてきた悟浄を寝室まで引っ張っていく。
「三蔵!?ちょ…待って!!冗談だってば!!」
何をされるか理解した悟浄は抵抗した。
三蔵はその言葉に不満そうな顔をする。悟浄がこの顔に弱いのを知っているからだ。
案の定、悟浄は困った顔をして何か考えている。
「じゃ…じゃあさ!俺は…デザート!デザートでいいでしょ?///」
「しょうがねぇな」
「///先お風呂入ってきて、ご飯の用意しとくから」
風呂から出るとテーブルの上に夕飯が用意されていた。
綺麗に盛り付けてあるサラダの横に赤ワインが置いてある。
三蔵はワインは赤以外口にしなかった。
「なんで赤ワインしか飲まないの?」
シチューを皿に盛りつけながら悟浄は三蔵に問い掛けた。
「お前を連想させるからだ」
「そ、そうなんだ///」
悟浄は三蔵に見えない所で赤くなった顔を手で扇いだ。
片付けが終わると悟浄はすぐ寝室に連れていかれた。
ゆっくりベッドに押し倒され、唇を奪われる。
口付けの合間に金の髪に指を沈めて抱き付く。
「三蔵…」
「なんだ?」
「…デザートは…食べ放題だからね…?///」
「…ああ」
その夜、三蔵は生まれて初めてデザート食べ放題に挑戦した…。
|