Instead of Cigarette
By ピッコロ様
旅の途中、立ち寄った小さな町はずれの宿。
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「あ〜、食った食ったぁ。腹一杯…」
廊下のつき当たりから手前にふたつ目の個室をあてがわれた悟浄は、部屋に入るなり 弛緩しきった身体をぼすっ とベッドに沈み込ませる。
「あ、そ だ…… タバコ… 」
寝転んだままの姿勢でがさごそとズボンのポケットを探り、ジッポと共に取り出した小箱は既にカラ。
「クソッ… メシの前に吸ったアレが最後だったなぁ… 忘れてた」
起き上がってベッドの上にあぐらをかき、しばらく考える。
部屋を訪ねて、重く閉じられたドアを軽くノックすると、軽快な音がして少し拍子抜け。
「……………… 」
返ってきたのは無言の返事。
「居るんだろ? 入るぞー……… 」
必要最低限に開いたドアからするり と身体を滑り込ませて壁に凭れる。
「なぁ、三蔵。ソレ気に入ってんだ? 俺が選んだんだもんなぁ〜」
磨き上げて艶を取り戻した小銃をサイドテーブルに置き、マルボロを1本銜えて火をつける。
「なぁ、三蔵。煙草1本頂戴? 買いに行くのが億劫でさぁ…
ゆっくりとした仕種で煙草を挟んだ細い指を口から離し、口内で転がした煙を吐き出して また近付ける。
[煙草吸うのって 煙草とキスしてるみてェだ]
[くだらねェ]と言われることは百も承知だから、言わない。
「残念 だな。これが最後の1本だ」
言われて腹立つと言うよりも[お前らしいよな]との呟きが漏れ出そうになるのをぐっ と堪え[ンじゃ 買いに行って来るか]とベッドから立ち上がった瞬間。
「おい… 目ェ開けろ」
言われて 返す、憎まれ口。
「…………ん ………っ 」
唇を重ねるのは、三蔵のほうからの時もあり、また 悟浄がいたずらっぽく強請ることもある。
「……っく …っ 苦し… って ……」
一旦離した唇をまた深く重ね、舌を絡めて口内を刺激する。
上体を起こしてバツが悪そうに俯いて髪を掻き上げる悟浄に、三蔵が 言う。
「それでしばらくはもつだろう」
言われたことの意味を汲み取れず、ぽかん とする悟浄に、チッ と舌打ち。
「自販機まではコレで我慢しろ」
言葉の意味を理解する間もなくまた重なり、マルボロの味がじわり と悟浄の口内に移る。
[煙草がわりのキス?]
頭でやっと理解した時には既に脳までも融かされ、身体も熱を帯び始めていた。
「俺の分も買って来い」
すごすごとベッドからおり、煙草を買いに出掛けるべくドアに歩み寄ると、背後から また三蔵の声。
「…おい……… 」
バタン と後ろ手にドアを締めて廊下に出ると、ひんやりとした空気が漂っていた。
「ま… 今夜は煙草、要らねーかも?」
[早く買って来よ…]と小さく呟き、宿を出て月明かりのもと 足早に歩みを進めた。 |
私の「海老で鯛を釣る」作戦がまんまと成功!し、お返しに頂いたお話ですv
「煙草とキスしてるみたい」はお気に入りの科白vvです(萌)。
ところで、この後悟浄さんは「猛ダッシュで煙草買いに行って猛ダッシュで帰ってきて、そして朝までv」
だったそうですよv(ピッコロ様:談)
それにしても、どうして私、キス以上の話をリクしなかったのか……しまった(悔)
ピッコロ様、素敵なお話ありがとうございました!